発達が気になる子どもへの声かけ

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「発達障害」という言葉は最近テレビなどでも話題になったりしているので、聞いたことがある方も多いと思います。発達障害は、正しくは神経発達症群と言われ、注意欠陥・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、限局性学習症(SLD)、コミュニケーション症(CD)、発達性協調運動症(DCD)が含まれています。

詳しい解説は、私がスクールカウンセラーとして小学校、中学校、高校でつとめてきた経験から、ADHD、ASDにおける注意集中の困難やコミュニケーションの苦手さは、クラスの中や家庭のなかで本人や周囲の人にとってスムーズに生活を送ることの難しさとなっていました。

ADHDやASDの傾向のある子どもは、周囲との衝突などや不注意や衝動性からくる失敗などから、教師や親からの叱責も受けやすく、子ども同士のなかでも孤立してしまう傾向があります。その結果、素直に指示が聞けなくなる、イライラしやすくなるなどの二次的な問題も生じて来ます。

ここで気をつけたいのが、子どもに合わせた声かけをしていくこと。ADHD等の症状については、メチルフェニデートなどの薬物療法によって、抑えられることもわかっていますが、基本的には「環境調整」が大切になります。また、「障害」とは言わないけれども、年齢的な要素も大きい「グレーゾーン」という子どもに対しても、環境調整は有効です。

環境調整とは、物理的に「刺激の少ない環境にする」などといったことも必要ですが、人的な環境調整が子どもの状態に大きく影響を与えます。つまり、関わり方を見直し、発達が気になる子どもがどのような場面でうまく行動をとれなくなるか分析し、理解しやすい声かけ、へそを曲げないような声かけ、気分を乗らせていく声かけをすることが大切になります。

目次

「困った子」ではなく「困っている子」

学校やお家の中で「困った子」とされているのは、「困っている子」なのです。「言うことが聞けない」「言ったすぐに同じ間違いを繰り返す」「きょうだいや友だちとすぐケンカになる」「かんしゃくを起こす」などなど、相談の現場では、たくさんの困りごとが日々起こっています。

ところで、「言うことが聞けない」とはどういう状況なのでしょう?ショウタ君という小学2年生の架空の男の子のお母さんの相談から少しどのようなことか見て行きましょう。

うちの子、言うことが聞けないんです!

いつも同じことで叱っているのに、同じことを繰り返してしまうんです!

この相談内容で、何が家庭のなかで起こっているのか、わかりましたか?私は、この訴えだけでは、イメージができません。相談内容をもっと理解するためには、何が起こっているのか直接見ているかのようにイメージできることが大切です。

また、よく保護者の方や先生方に子どもの行動を考える上で大切な点として、「死人テスト」という言葉を伝えています。死人は、息もしませんし、動きませんよね。死人にもできることは、ある行動について表現する時には利用しないということ。ちょっとわかりにくいですが、ショウタ君のお母さんは「言うことを聞けない」と言っています。死人も「言うことを聞けない」ですよね。

などと、質問を加えます。こう質問すると、案外、覚えていない保護者の方も多く、ショウタ君のことを「言うことを聞けない子」という印象でお話しされていることもあります。

詳しく話を聞いていくと、お母さんがキッチンから「お風呂わいたわよー!」と伝えたとします。ショウタ君はリビングでブロックで遊んでいます。おそらくお母さんの話は聞いていません。「だからお風呂湧いたって言ってるでしょ!何回も言わせないの!!!」と大きい声でお母さんが叱ります。ショウタ君は暴れだしてしまったそうです。こういったことが週に2,3回あるというのです。

この状況をショウタ君サイドから見てみましょう。ショウタ君からしたら、ブロックに集中して遊んでいます。お母さんが何か言っているような、「ああ、お風呂が湧いたのか。ふーん。」と何となく思いながらも、遊び続けます。

そうすると、急にお母さんに怒鳴られたのです。びっくりしたショウタ君は泣き出しますが、お母さんも「あなたが悪いんだから、泣かないの!」と怒っていて、さらに怒りも混じって訳が分からなくなってしまいます。

お母さんは、「今お風呂に入って欲しい」と思っていますが、ショウタ君は遊びたい。「お風呂が湧いた」と言われても、遊びたいショウタ君は「お風呂に入る」という行動にまでつながっていません。このやり取りでショウタ君に残ったのは、「あなたが悪いと言われたこと」、「お母さんが突然大声を出して怖かったこと」、「感情が爆発してコントロールできなくなってしまったこと」です。

このようにショウタ君は困っているのです。ここでは、ショウタ君の認知(考え方や問題解決の仕方)の特徴やお母さんの声かけ方はどのように考え直すと良いのでしょう。

子どものつまずきを分析する

まず1つ目に、ショウタ君は、「好きなことに集中したらなかなか周りの状況に気づきにくい」というところがありそうです。そんなときに、声をかけてもお母さんが望んだような反応はかえってこないでしょう。

ここでの声かけの工夫として、ショウタ君の近くまで行ってから目を見て声をかけることが必要でしょう。これは、学校では手遊びが多かったり、なかなか話に集中できない子を一番前の席にする、話をする前に「前を向きましょう」といった注意を向ける言葉かけをすることもあります。子どもはそもそも注意が逸れやすく、維持しにくいため、必要な工夫として心がけると良いでしょう。

さて、ショウタ君が困っていることの2つ目に、「やるべきことを想像しにくい」というところがありそうです。具体的な指示をすること。「お風呂が湧いた」ということは指示ではなく、「報告」です。子ども相手には、「そこから先は察して」という態度よりも、具体的に細かく伝えることが必要になります。そのため、「これ、それ、あれ、どれ」などの「こそあど」といった指示語は用いないこともポイントです。

ショウタ君が困っていることとして、「あなたが悪い」という言葉に「攻撃された!」と思うと傷ついた気持ちが爆発しやすいことが考えられます。これは元々の特徴というよりは、注意を受けることが多く、二次的な問題として出て来ていることが予想されます。傷つくと悲しいという気持ち、怒りという感情につながりやすく、コントロールが難しくなるようです。

ここでの工夫としては、まずそういう言葉を言わないよう、お母さんも気をつけることも一つですが、万一言ってしまったとしたら、「お母さんが言ったことに傷ついたんだ。」ということを認める言葉かけをしてください。

お子さんの性格に合わせて、興奮しているときに声をかけるとヒートアップする子であれば、背中をさすってあげるなどの身体的な承認を、身体に触るのも刺激になりやすければ、「落ちついたら声をかけるね。」と伝えて、少し様子を見る等の対応をすると良いでしょう。

これらの困りごとについて、変化を起こすためには、まず、子どもの変えたい行動を1つに絞ります。そして、その行動が起きやすい曜日や時間帯について、把握することで対応について対策を練りやすくなります。また、今回は架空事例について検討しましたが、実際の困る場面について分析するためには、その前後の状況を把握する必要があります。

以下、問題となる行動が起きる時間帯や頻度について記録する表と問題の状況について分析するための表を用意しましたので、スクールカウンセラーや相談機関などで相談する際にご利用ください。また、相談員やカウンセラーの方もご利用ください。

保護者の方が記入しても良いですし、学校での困りごとであれば、担任の先生などが記入しても良いと思います。大切なのは、周囲の人達(他の児童生徒の言動も含め)の言動に対して、本人にとってどのような意味があり、どのような反応を示しているのか、そしてその行動が維持(続いている)されているのはなぜか、ということを理解することです。

ここまでは、分析編と言いますか、状況を分解し、子どもの困りごとをどのように読み解くかについて見てきました。

また、この後に「代わりの行動を提案する」「振り返る」といった作業もとても重要になりますので、頑張って投稿してみたいと思います!最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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