「不安がある」「不安が強い」という状態について、一般的にはどういう状態が考えられるでしょうか?
「明日プレゼンがあってさ〜、うまくいくか不安なんだよね」
「休み空けで、久々の学校だから、みんなとうまく話せるか不安・・・」
「昨日、気まずい雰囲気になっちゃったから、今日、どんな反応されるか不安・・・」
などなど、不安とは、未来など分からない状況や反応、不確かな場面等に対して抱く感情だと考えられます。
一方で、「恐怖」とはどのような感情を示すのでしょうか。恐怖は不安と異なり、現在の目の前の対象に対する反応を表します。もし、私たちの目の前に自分の身長の2倍ものクマが現れたら?
心臓の鼓動は速くなり、脈拍も血圧もたちまち上がり、目を見開き、冷や汗や手汗をかいているでしょう。その後に、逃げるのか、戦うのか、固まるのか、個人によって様々な反応をすると思います。
これらは、「Fight (戦う)or Flight(逃げる) or Fleeze(固まる)」反応と言われるもので、生物個体が生命を維持するにあたって、必要な反応となっています。
- 赤面する
- 息苦しさ
- 動悸(心拍の上昇)
- 声や手の震え
- 発汗
などがよく起こりうる反応です。脳の中では「扁桃体」といった部位がこの恐怖や不安などの情動反応に関係していると言われています。
具体的には、「扁桃体」は、目や耳、肌の感覚からの情報など五感からの情報に対して、過去の経験などをたどって危険か危険じゃないかを判断する、「火災報知器」のような役割を持っています。
目の前に恐怖の対象がある場合、この火災報知器が正しく作動しなければ、クマに襲われて重大な怪我を負ってしまうかもしれないし、火事に巻き込まれて火傷を負ってしまうかもしれない。
「扁桃体」は生命の維持にはとても大切な働きをしています。
一方で、この「扁桃体」という「火災報知器」が誤作動を起こす状態が「不安が強い」状態と言えます。恐怖の対象が目の前にない場合、未来や不確かな状況に対して、扁桃体が強く反応してしまうと、どうなるでしょう。
例えば、「明日のプレゼン」のことを考えるだけで、冷や汗をかき、命の危険を感じるほどの恐怖の反応を示してしまうことになります。
扁桃体は、過去の記憶をたどって「危険か危険ではないか」という判断をしますので、過去の失敗なども無意識か意識的かといったことは別として、判断の理由になっているのかもしれません。
感じている不安について、いてもたってもいられないような「コントロール感」が、過剰な不安反応か通常の反応なのかを判断する材料になります。
「動悸が起こってしまった。死んでしまうのかもしれない」などのコントロール感を失うと、それは「不安症」という病気の状態と考えられます。
現在の治療法の中では、「認知行動療法」の様々な技法を用いて、この不安症を治療していくことが最も有効と言われていますが、その他の精神療法においても、一定の効果が得られているものもあります。
「認知行動療法」では、不安の対象となっている事柄に直接取り組んで行く治療も含まれますので、不安が強すぎる方には向かない場合もあります。カウンセリングにおいては、相談者のご希望に応じて方法や目的をアレンジすることができます。